2022.03.18

ロシアの侵略を押し止めるために「国際人権の理念」が果たしている役割

見知らぬ人への「共感」の力

国際社会の貢献

ロシアによるウクライナ侵略が始まってから数週間が経つ。この蛮行に対する国際社会の反応は、予想以上に迅速で連帯感のあるものであった。これまでのウクライナ側の善戦は、もちろん一義的にはゼレンスキー大統領のもとで一丸となって戦うウクライナの人々の勇気ある抵抗によるものであるが、国際社会による経済制裁や防衛力供与もウクライナの人々を側面から支援し、少なからぬ貢献を果たした。

ゼレンスキー大統領〔PHOTO〕Gettyimages
 

今後の戦況に関しては、ロシア軍がさらに残忍な手段を使って攻撃を強めウクライナを屈服させようとする中で、どこまでウクライナが持ち堪えられるのか、そして国際社会がどうやってウクライナへの支持を実効性のあるものにできるかに注目が集まっている。

長期戦になりロシアにとって「第二のアフガニスタン」(ソ連が1979年に侵攻し、同国の衰退を決定づけた)になる可能性、ロシア軍の敗北とプーチン大統領の失脚の可能性、第三国の仲介による和平の可能性、NATOが引き込まれて戦線が拡大する可能性など、これからの展開は多くの専門家の意見も分かれるところであるが、さしあたって、ここまでの国際社会の対応はどのように評価されるべきなのだろうか

結論から言うと、急速で大規模な侵略行為や戦争犯罪、ジェノサイドなどに直面した時、特にそれが国連安保理の常任理事国の利害と関わっている場合、国際社会にできることはそもそも限られており、そうした制約を考慮に入れると、今回の米欧を中心とする国際社会の対応はかなり評価されるべきものと考える。

拙著『人権と国家 理念の力と国際政治の現実』で強調した国連の仕組みに見られる「国際政治の現実」の前で、普遍的人権と平和を志向する「理念の力」が苦しみながらも成果を見せようとしているのが現在の状況である。

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